3Dプリンターのサポート材とは?
2021.07.31 更新日:2024.02.28
- 3Dプリンター
3Dプリンティングをする上で、「サポート材」というものが必要になる造形が存在します。
サポート材とは、造形物が崩れ落ちてしまわないように支える部分のこと。
このサポート材がなければ造形できない立体物も多いため、3Dプリンターを活用する上で欠かせないものと言っても過言ではありません。
「まだサポート材を使った造形をしたことがない」「そもそも3Dプリンターの導入を検討している段階だ」という方々は、これからサポート材が必須な造形をする可能性もおおいにあるでしょう。
そのためには、サポート材の基本知識を身につけておく必要があります。
そこで今回は熱溶解積層方式の3Dプリンターの焦点をあて、サポート材が必要な造形をご紹介したあと、サポート材が生成される仕組みや、実際にサポート材を使用する時、どのように設定したら良いのかなどを詳しくご説明します。
3Dプリンターの導入を検討中の方や、これから3Dプリンティングの幅を広げたいという方は、ぜひ参考にしてください。
3Dプリンティングにおけるサポート材とは?
3Dプリンティングにおけるサポート材とは、その名の通り、造形物を支える部分のことです。
造形物が崩壊しないために必要なサポート材ですが、つけ方によって造形物の仕上がりに大きな影響を与えることも多々あります。
造形物を支えてくれるサポート材ですから、しっかりと造形物につけたほうが良いのかとも思われがちですが、実は、造形物をなるべく綺麗に仕上げるためには、造形物とサポート材がつく部分を極力減らすことが求められることも。
サポート材はプリント後に造形物から剥がす必要があるため、より綺麗に見せたい表面にサポート材をつけてしまうと、取り外しに苦労する上、研磨などの手間も増えます。
造形物の形状によっては必ず必要なサポート材ですが、つけ過ぎには注意が必要です。
サポート材が必要な造形
サポート材が必要ない造形も存在しますが、先ほどお伝えしたように、中にはサポート材がなければプリントが難しいものも。
ここでは、基本的にサポート材が必要な造形についてご説明します。
オーバーハング
オーバーハングとは、もともとは岩壁の傾斜のこと。
3Dプリンターの造形で例えると、Y字やT字の形状のことです。
これらのY字やT字の上部は、サポート材がないと支えられず、プリント途中に崩れ落ちてきてしまう可能性があります。
そのため、Y字の上部の二股部分や、T字の上部の一文字部分の下にサポート材をつけ、支える必要があるのです。
ブリッジ
ブリッジは、その名の通り、橋のような形状をしている造形物のこと。
アルファベットのHを想像していただくとわかりやすいかと思いますが、真ん中にかかっている橋の部分の下にサポート材をつけなければ、橋の部分を支えることができずに、ミスプリントが発生します。
サポート材が造形される仕組み
では、実際にサポート材が必要な造形物をプリントする時、サポート材自体はどのように造形されるのでしょうか。
押出ノズルの本数別に、特徴なども併せてご説明します。
押出ノズルが1本の場合
押出ノズルが1本しかない3Dプリンターの場合、造形に使用する材料と同じものでサポート材が生成されます。
押出ノズルが造形物を積層しながら、同時にサポート材も積層していく仕組みです。
ノズルが1本タイプの3Dプリンターは、サポート材が取り外しにくいところが難点。
造形物とサポート材が同じ素材であるため、造形物の形状によっては、造形物とサポート材の接合部分が完全に密着してしまうことも少なくないのです。こうなってしまうと、サポート材を取り除くことが困難になってしまいます。
手で外すことは難しいため、カッターなどで取り外すことになりますが、場合によっては造形物が破損してしまうことも。
押出ノズルが2本の場合
押出ノズルが1本の場合の課題を解決してくれるのが、押出ノズルが2本タイプのデュアルヘッド3Dプリンターです。
業務用のハイエンド3Dプリンターでは押出ノズルを2本搭載している場合が多く、片方のノズルからは造形物用のフィラメントを、もう片方のノズルからは専用のサポート材を押し出すことができるため、造形物とサポート材とで同じ素材を使う場合に比べて、取り外しが容易に行えるものもあります。
専用のサポート材は水溶性の素材で、水に溶かすだけで取り外すことができるため、造形物を傷つける心配がありません。しかし、材料そのものの吸水性が高いため、材料管理がシビアで、造形自体の難易度も上がるため、水溶性でないとサポートの取り外しが難しい形状でのみ使用をお勧めします。
サポート材をつける際のコツ
サポート材を綺麗に設置するためには、いくつかのコツが必要になります。
以下では、最低限覚えておいていただきたいサポート材生成時のコツについてご説明しますので、ご確認ください。
まずは自動生成してみる
3Dプリンティングを行う際は、STLなどの3Dデータを3Dプリンター用のデータに変換するスライサーソフトというものを使用します。
このスライサーソフトには、多くの場合、自動でサポート材をつけてくれる機能が搭載されているため、まずはその機能を使って自動でサポート材を生成してみましょう。
手動で微修正を加える
ただし、自動生成だけでは不足な場合も多いのは事実です。
サポート材を生成するための専用ソフトも存在しますが、それでも完璧にサポート材を生成できるかと言うと、そうとも言い切れません。
少し手間になってしまいますが、自動生成がうまくいかない場合は、手動で設定を微調整していくと、綺麗にサポート材が造形される角度を見つけることができるでしょう。
造形物の角度を変えてみる
さらにサポート材を綺麗につけたい、生成したい、という場合は、造形物の角度や向きを変えてみましょう。
造形物の角度や向きを少し変えるだけで、サポート材のつき方がまったく変わってきます。
設定や造形物の角度には無限の組み合わせがあるため、「この面だけは絶対にサポート材をつけたくない」「少し精度が落ちてもミスプリントの頻度を減らしたい」など、ご自身の中で優先順位をつけて調整すると良いかもしれません。
設定項目の意味を学ぶ
この記事をご覧の方であれば心配ないかもしれませんが、3Dプリンターは設定項目が多く、全てを理解するには大変な労力が必要になります。
しかし、設定項目の意味を理解せずに値をいじっていても収集がつかなくなってしまうでしょう。
柱サイズ、先端サイズと形状、ラフト形状と厚さ、サポートの密度などの項目は、最低限理解しておくことが必要です。
サポート材を生成する際の問題点
サポート材は3Dプリンティングの幅を広げるという意味で非常に重要なものですが、その生成には、いくつかの問題点があります。
まずは、材料費の増加です。
サポート部分が増えれば増えるほど、当然のことながら、その材料費がかかります。
例えば、造形物が小さく薄い場合は、造形物そのものよりも、サポート材のほうが材料費がかかる場合も。
また、プリント時間も、サポート材を導入する場合の問題点として挙げられます。
サポート材が必要な部分が多ければ多いほど、造形物そのものとは別に、サポート材を生成する時間が取られてしまうのです。
さらに、先ほども少し触れたように、これは主に押出ノズルが1本の3Dプリンターで問題になりがちですが、後処理の手間がどうしても発生してしまいます。
サポート材は造形後にニッパーやカッターで取り外しを行わなければいけないため、サポート材のつく箇所が多かったり、サポート材が太かったりする場合には、取り外しに苦労する上、研磨も必要になるでしょう。
後処理や研磨は工数増加に繋がり、その分コストもかかります。
サポート材のコストやプリント時間を抑える方法
前項の内容からもおわかりいただけるかと思いますが、サポート材は、その材料費や、造形物をプリントする時間に加えてサポート材を生成する時間が必要など、コストがかかるため、抑えられるのであれば抑えたいポイントです。
こうした問題を少しでも解消するために、簡単に行える対策をご紹介します。
サポート材の密度を調整する
ソフトウェアで調整が可能であれば、サポート材の密度を調整することによってコストを削減することができます。
サポート材の密度を高くすると、いわゆる頑丈なサポートができあがるため、プリントが安定し、造形物が綺麗に仕上がる可能性はおおいにありますが、材料の消費量とプリント時間が増える上、箇所によってはサポート材が取り外しにくくなってしまうことも。
サポート材の密度を低くすることで、材料の消費量とプリント時間の削減に繋がり、サポート材も取り外しやすくなります。
ただし、この対策を行うことによって、造形物の形状によっては失敗を引き起こす可能性が少々出てきてしまうことは覚えておいてください。
プリント方向を変える
プリント方向を変えるのも、サポート材にかかるコストを削減するのに良い方法です。
造形物をプリントする向きを変更することで、向きを変える前よりもサポート材がつかない部分が増えることがあります。
例えば、オーバーハングのT字はそのまま造形すると必ずサポート材が必要ですが、逆さにして一文字が底面にくるようにすれば、サポート材は不要になります。
ただし、底面積が広い場合は、造形物をテーブルから外すのに苦労する場合があるため、サポート材にかかるコスト削減を優先するか、造形物を最大限綺麗に仕上げることを優先するかを決めておく必要があるでしょう。
サポート材に対する疑問にも、日本3Dプリンター株式会社がお答えいたします!
日本3Dプリンター株式会社は、3Dプリンターの導入を検討されている方の課題やニーズに応じて、包括的にサポートをさせていただきます。
もちろん、3Dプリンターのサポート材に関する疑問にも対応可能です。
記事ではご紹介しきれなかった、サポート材をより正確に生成するコツや、サポート材と相性の良い3Dプリンターをご紹介することもできます。
さらに、3Dプリンターを実際導入された後のサポートなども充実しており、サポート材の生成のみならず、造形物そのものや、3Dプリンター用のデータ作成などについての技術的な支援もできるのは、3Dプリンターの専門的な知識を持ったスタッフが多数在籍している日本3Dプリンター株式会社ならでは。
3Dプリンターの導入を検討しているのであれば、サポート材生成を含めたトータルサポートを行える、日本3Dプリンター株式会社に、ぜひご相談ください。