【徹底比較】PET CFフィラメントの特性と選び方|Raise3D、Forward AM、Bambu Labの数値を検証

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【徹底比較】PET CFフィラメントの特性と選び方|Raise3D、Forward AM、Bambu Labの数値を検証

  • 3Dプリンター

1. はじめに:なぜ今「PET CF」が注目されるのか

3Dプリントの現場において、PA-CF(ナイロンカーボン)は長らく高強度材料の代名詞でした。しかし、吸湿性の高さによる管理の難しさや、造形時の収縮(反り)に悩まされるケースも少なくありません。 そこで今、急速に注目を集めているのが「PET CF(炭素繊維強化PET)」です。PA-CFに匹敵する強度を持ちながら、「吸湿性が極めて低い」「寸法安定性に優れる」という特性を持ち、治具や最終部品での活用が広がっています。

2. 主要3ブランドのPET CFスペック比較

市場で評価の高い3つのブランドのスペックを比較しました。

製品名引張強度 (XY)引張弾性率 (XY)曲げ強度 (XY)HDT @ 0.45 MPa最高印刷速度
Raise3D Hyper Spee65.9 MPa5,550 MPa114.2 MPa156.4 ℃300 mm/s
Raise3D Industrial87.0 MPa5,185 MPa125.7 MPa112.0 ℃60 mm/s
Bambu PET CF71.4 MPa5,600 MPa131.0 MPa205.0 ℃100 mm/s
Ultrafuse® PET CF1563.2 MPa6,178 MPa108.5 MPa165.0 ℃80 mm/s

※各数値はTDSに基づくXY軸方向の代表値です。プリント条件やアニール処理の有無によって変動します。

数値から見る「最適な1本」の選び方

スペック表の数値は、単なる優劣ではなく「その材料が何を重視して設計されたか」を示しています。用途に合わせて、以下の4つの視点から最適な1本を選定してください。

1. 「時間」を最大のコストと考えるなら:Raise3D Hyper Speed PET CF

 

※3Dプリンターがフィラメントを押し出しながらヘッドを動かせる最大の速度です。通常、炭素繊維を含むフィラメントは流動性の関係から綺麗にプリントするために速度を大きく落とす必要があります。

3Dプリントにおいて、造形時間は常に課題となります。最高印刷速度 300 mm/s という数値は、他社製品の3〜5倍に相当します。

・メーカー紹介: Raise3D社は、産業用からプロシューマー向けまで、高い精度と信頼性を誇る3Dプリンター本体と専用フィラメントをグローバルに展開しているメーカーです。

・選ぶ理由: 試作回数を増やして開発サイクルを極限まで早めたい場合や、治具が破損して即座に予備が必要な製造現場に最適です。

・ポイント: 単に速いだけでなく、引張弾性率(5,550 MPa)も高く、実用的な剛性を維持したまま「速く、硬い」パーツを得られます。

Raise3D Hyper Speed PET CFについて

2. 「物理的な負荷」に耐える強靭さを求めるなら:Raise3D Industrial PET CF

※引張強度(Tensile Strength)は、造形物の両端を持って引っ張った際に、どれだけの力まで「千切れずに耐えられるか」を示す指標です。数値が高いほど、強い引張荷重に耐えうる強靭なパーツになります。

クランプ、フック、ボルト締結を伴う部品など、強い力で引っ張られるパーツには、引張強度 87.0 MPa を誇るこの材料がベストです。

・メーカー紹介: 上記と同じくRaise3D社ですが、こちらの「Industrial」ラインは、より最終製品や過酷な環境下での使用を想定した産業グレードのフィラメントシリーズです。

・選ぶ理由: 4製品の中で最も「ちぎれにくい(引張に強い)」特性を持ち、金属代替パーツとしての信頼性が極めて高いのが特徴です。

・ポイント: アニール処理を行うことで内部応力が除去され、産業グレードに相応しい寸法安定性と強靭さを発揮します。

Raise3D Industrial PET CFについて

3. 「高温環境」や「複雑な形状」を優先するなら:Bambu PET CF

※HDT @ 0.45 MPa(荷重たわみ温度)は、一定の荷重(0.45 MPa)をかけた状態で熱を加えた際、材料が軟化して変形し始める温度です。

カーボンフィラメントの弱点である熱への耐性において、HDT(荷重たわみ温度)205 ℃ という数値は驚異的です。

・メーカー紹介: Bambu Lab社は、高速プリントと多色な造形技術で瞬く間に業界のトップランナーとなった新鋭メーカーです。低価格でありながら初心者でも扱いやすいシステムが高く評価され、コンシューマーからプロフェッショナルとして幅広い業界で採用されています。

・選ぶ理由: 自動車のエンジンルーム周辺のダクト類や、高温になる製造ラインで使われる治具、熱を発する電子基板を収めるエンクロージャーなど、熱による変形が致命傷になるパーツに必須の性能です。

・ポイント: 曲げ強度(131.0 MPa)も高く、力がかかった際に「しなり」ながらも耐える特性があるため、複雑な応力がかかる形状に適しています。

4. 「精密な嵌合」や「長期の寸法精度」を重視するなら:Ultrafuse® PET CF15

引張弾性率 6,178 MPa という圧倒的な「硬さ(変形しにくさ)」が最大の武器です。

・メーカー紹介: Forward AMは世界最大の総合化学メーカーであるBASFの3Dプリンティング部門として発足したブランドです。長年の化学的知見を活かした、極めて品質の高い素材開発で現在はStratasys傘下で展開しています。

・選ぶ理由:「力を受けてもミリ単位のたわみすら許されない」ような精密機械のハウジングや、ロボットアームのエンドエフェクタ、測定用の検査治具など、極めて高い寸法安定性が求められる用途にベストマッチします。

・ポイント: 吸湿耐性が非常に高く、環境変化の激しい工場内でも物性が安定しているという、スペック表に現れにくい「運用上の信頼性」も大きな魅力です。

Ultrafuse® PET CF15について

まとめ:失敗しない選び方のフロー

1.今日中にパーツが欲しいRaise3D Hyper Speed PET CF

2.とにかく壊れない(引っ張りに強い)ものが欲しいRaise3D Industrial PET CF

3.熱くなる場所で使いたいBambu PET CF

4.カチッと硬く、精密なものが欲しいUltrafuse® PET CF15

Raise3Dプリンターでの具体的な活用事例や、高速造形に対応した専用プロファイルについては、[Raise3D公式サイトの材料コラム]で詳しく解説しています。