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医療の新たなものづくりのカタチを目指し、 自助具や福祉機器の内製化を推進

2023.04.06 更新日:2024.08.23

神奈川県総合リハビリテーションセンター 様

  • RAISE3D
  • 3Dプリンター
  • EinScan
  • 3Dスキャナー
  • デザイン
  • 研究・医療

 

神奈川県総合リハビリテーションセンターは、まだ「リハビリテーション」という言葉が一般に認知されていなかった1973年、全国に先駆け神奈川県厚木市に設置されました。以降、医療と福祉が連携した総合リハビリテーションの拠点施設として、県行政の医療・福祉の一翼を支えています。

 

設立時からの特徴である、病院や施設での訓練を通じ職業復帰や自宅での生活を目指す通過型施設という機能と、医師、看護師、理学療法士、ソーシャルワーカーや福祉支援員といった、さまざまな職種によるチームアプローチによるリハビリテーションにより、これまでに9万人を超える患者・利用者の社会復帰を支援してきました。

 

中でも同センターの特色は、障害のある方がより豊かに生活できるよう工学技術の観点から支援するリハエンジニア(リハビリテーション工学技師)の存在。OT(作業療法士)とリハエンジニアの協働から生まれた「かなりは式3Dプリントシステム」の取り組みは、医療機関における3Dプリンターの活用例として先駆者的な位置づけです。

 

神奈川県総合リハビリテーションセンター画像左から 作業療法士 一木 愛子 様  リハエンジニア 松田 健太 様

神奈川県総合リハビリテーションセンター
画像左から 作業療法士 一木 愛子 様  リハエンジニア 松田 健太 様

 


 

「かなりは式3Dプリントシステム」とは?

 

「身体に障害がある患者さんが日常生活動作を自身で行うためには、それぞれの身体機能に合った、なんらかの『自助具』や『福祉機器』を必要とします。同センターでは、医師、作業療法士、義肢装具士、リハエンジニアなどさまざまな職種が連携し、対象の患者さまのニーズの聞き取りや身体機能の評価などを行い、院内の3Dプリンターを用いて作製する継続的なシステムを構築。患者さまを支援する取り組みを進めています。」(一木様)

Raise3D Pro2自助具

 


 

企業名:

神奈川県総合リハビリテーションセンター

 

導入製品:

Raise3D Pro2 3Dプリンター(販売終了)
※現在は後継となるRaise3D Pro3、上位機種Pro3 HSをご案内しております。

 

EinScan H 3Dスキャナー(販売終了)
※現在は後継となるEinScan H2をご案内しております。

<導入前の課題>

  1. ・非大量生産で個別性が高い自助具を再作製する際、再現が難しい
  2. ・手作りのため作り手の技術や思考力、その人ならではのセンスが求められる
  3. ・石膏での型取り時に、じっとしていられない乳幼児患者の負担が大きい

<解決>

  1. ・形状をデータ化することで再現性が高く、トライアンドエラーもしやすい
  2. ・形状の自由度と造形精度の高い3Dプリンターで、作製に関わる時間を短縮
  3. ・精度の高い3Dスキャナーであれば、患者に負担をかけず計測できる

 


 

背景・課題

新しいものづくりの実現を目指し、自助具の内製化を推進
ニーズの高まりと共に、より造形精度が高く、使い勝手のよい機種が求められた

 

― 最初に3Dプリンターを導入された経緯をお聞かせください。

 

最初は漠然と、『3Dプリンターがあれば、新しいものづくりのカタチが実現できるのではないか?』と考えたのがきっかけでした。現在では多くのリハビリセンターや医療機関で3Dプリンターが導入されていますが、当センターが最初に導入した2015年頃は、まだ少なかったと思います。某書籍を長期間定期購読して、送られてくる部品を組み立てて手作りしたのが当センターの1号機です。これを使って何かできない?と一木らに持ちかけたところ、『熱可塑性の自助具で、経年劣化で壊れて困っている患者さまがいる』という相談があり、そこから少しずつニーズが広がっていきました。」(松田様)

 

― 3Dプリンター導入前、どのような業務上の課題やニーズがあったのでしょうか?

 

「自助具が生活場面で必要な患者さまで、個別性が高いものが必要な方は、その後の再作製時の再現性が課題です。患者さまから『自助具が壊れたので、同じものを作って』という依頼を受けた場合、手作りの自助具はまったく同じものを作ることは非常に難しく、経験豊富なセラピストでも完全に同じものは作れません。経験が浅い場合は、さらに苦労します。個別性が高いものほど、非大量生産品であること、作製に時間がかかること、作り手の技術や思考力、その人ならではのセンスが求められ、再作製ごとに大変な思いをしています。なんとかしてその課題を解消したいとの思いがありました。」(一木様)

一木様

 

既存の自助具を再現する際、手作りでは限界があります。「従来は、作業療法士がアルミを曲げたり、木を削ったりしていましたが、それと比べて、3Dプリンターは形状の自由度が高い。データによる再現性が高く、トライアンドエラーもしやすいことで、モノづくりのレベルを高められると感じました。」(松田様)

松田様

 

そして同センターは外部からの資金確保もあり、2台目となる3Dプリンターを導入。最初はあるものを再現するところから始まり、実践の中で活用のアイデアを練っていったとのことです。

 

すららとぱっくん

この時期の成果として、一般社団法日本リハビリテーション工学協会が主催する福祉機器コンテストで、同センターが独自開発した自助具「すららとぱっくん」が、2016年度の機器開発部門・最優秀賞を受賞しました。「すらすら書けて、ぱくぱく食べられるようにと一木が名付けました。現在では学生部門でも3Dプリンター製の作品も多く出品されていますが、この当時、3Dプリンターを使って出品したのは我々だけでした。」(松田様)

 

― 当社製品をお知りになられたきっかけと、課題を教えてください。

 

「2台目を利用する中で時折、造形に失敗することがありました。ノズルなどを清掃することで解消するケースも多かったのですが、現場からのニーズが高まるにつれて、より造形の精度が高く、さらに使い勝手のよい機種を探していました。そしてネット検索で『Raise3D Pro2 3Dプリンター』を知り、日本3Dプリンターさんに問い合わせしました。」(松田様)

 


 

選定・導入

導入前のサンプル造形でその精度を実感
3台目としてRaise3D Pro2 3Dプリンターを導入

 

― 3台目として当社からRaise3D Pro2 3Dプリンターを導入された「決め手」を、お聞かせください。

 

問い合わせした際、日本3Dプリンターさんは『既存のデータを送っていただけたら、当社でお試し造形しますよ』と言ってくれました。これまでは発注したら製品が届くだけなのが普通でしたので、まずその対応に驚きました。そして実際に当院で作製した自助具、それもかなり構造が複雑なものをお送りしてサンプルを作ってもらったところ、本当にきれいな仕上がりで、また驚きました。これまでの機種ではうまく造形できなかった細かな箇所も見事にできていて、強度も充分。そして製品の詳細をお聞きして、使い勝手などこれまで不満に感じていた点が解消できると思いました。開発予算の目途も立ち、正式に導入を決定しました。」(松田様)

 

Raise3D Pro2

 


 

ご活用内容・成果

失敗のない造形精度と後処理の少なさに満足
ソフトウェアも直感的に扱いやすい

 

― Raise3D Pro2 3Dプリンターの具体的な活用方法およびメリットをお聞かせください

 

「まずは造形の精度。約2年利用していますが、これまで失敗は1度もありません。加えて、ソフトウェアや機器自体の精度も高いため、サポート剤の除去がしやすい点もメリットです。自助具は患者さんの身体へのフィット感が重要ですので、斜めになっていたり、円形になっていたりするのですが、やすりがけなどの仕上げもほぼ要らないほどの仕上がり精度で、造形した後処理の手間も、大幅に削減されました。」(松田様)

 

「これはこの機種に限らず3Dプリンターを活用することのメリットですが、手作業で作製していた時と比べて自助具のアレンジ、不具合の解消、身体変化への対応、短期間での改造といったカスタマイズが圧倒的にしやすくなりました。当初期待した、個別性が高いものの再作製も容易になり、作製者の技術差も解消できています。また、作製に直接関わる時間が短縮できることで、本来業務に注力することができます。」(一木様)

 

また、同院では自助具のほか、義肢装具のパーツ作製でも3Dプリンターを活用しています。「これまで木材や金属を加工して作っていたパーツも、一部は3Dプリンターで作製しています。ハンド(義手先端の手の部分)を、より軽さが求められる乳幼児の患者さん向け、チアダンスに復帰したいお子さん向けに作りました。」(松田様)

 

― ソフトウェアの使い心地はいかがですか?

 

「表記もすべて日本語ですし、ある程度デフォルトの仕様やひな形から選べるようになっているので、最初から問題なく扱うことができました。インターフェースも、直感的にやりたいことができてわかりやすいです。まだまだ使っていない機能も豊富に備わっていますので、もっと使いこなしたいなと感じています。」(松田様)

松田様

 


 

3Dスキャナーの導入

従来品よりもスキャン精度が高く、現場での活用を推進
小児患者の負担軽減や調整時のデータ比較にも有効

 

加えて同院では、EinScan H 3Dスキャナーも導入しています。

 

― EinScan H 3Dスキャナーの具体的な活用方法およびメリットをお聞かせください

 

「スキャナーは以前から保有していましたが、精度が粗くそれほど活用はしていませんでした。こちらも導入に際し、日本3Dプリンターさんが当院の実際の利用環境に近い状況でデモンストレーションしていただき、従来品よりも高精度で、活用できそうでしたので導入しました。自助具やパーツをスキャン、コピーするだけではなく、義肢装具を作製する際、石膏を使用した型どりが難しい小児の患者さんなどで活用しています。小さなお子さんは動かさないのも難しいですし、石膏で固められることを怖がられるケースもあります。3Dスキャンであれば、そうした負担を和らげることができます。現在まだは使いはじめで課題もありますが、今後、スキャン方法を検討することでデータの精度が高まると考えています。」(一木様)

 

松田様スキャンの様子

 

「一例として、競技用のレーサーグローブは手作りしたものとフィッティング、微調整したものをスキャンしてデータ上で差異を数値で確認するなど、リバースエンジニアリング的な活用方法も、模索しています。従来品よりも細かく設定してスキャンできるため、より多くのシチュエーションでデータをとることができています。」(松田様)

 


 

今後の展望・当社への期待

さらに対応スピードと精度を高め、利用範囲の拡大を模索
患者の自立支援に貢献するものづくりを推進

 

― 今後、3Dプリンターおよび3Dスキャナーを活用したいアイデアがあればお聞かせください

 

「今後はさらに、自助具や義肢装具のパーツ作製をより効率的に、対応スピードと精度を上げて行きたいですね。例えばすでにある自助具を再作製する際、現物をスキャンして図面データにしたら、ほぼ修正なしで造形できるのが理想です。」(一木様)

 

「我々が作製するものは患者さん固有のニーズに応えるもので、身体的な特徴に合わせて個別で作るものではありますが、その一方で汎用的に多くの方が利用できることも常に意識しています。ある程度誰でも使える基本の形があり、必要に応じて少し調整するのが理想です。そのためには属人的な職人技ではなく、データ化することが重要だと思います。今後、義肢自体など大きなものを造形するケースも増えてくると思いますので、3Dプリンターも大型化と共に、高速化がカギになると思います。」(松田様)

 

― 医療現場における3Dプリンター活用のポイントとは?

 

「やはりデータ生成でしょう。私は前職が自動車業界で、CADもある程度扱うことができたのですが、医療現場では昼間は患者さんと対峙していますから、データを作ることを覚えて、実際に作ってという時間が創出しにくい。その点、当院は3Dプリンターを活用しやすい環境だったことが幸運でした。しかしながら今後、院内で内製するニーズは高まると思いますので、なるべく早く、まずは簡単なところからでも、とにかくチャレンジすることをオススメします。」(松田様)

 

― 提案からの一連の当社の対応についてのご評価をお聞かせください。

 

「日本3Dプリンターさんは、常に一緒に考えて動いてくれる印象です。最初に問い合わせした際のサンプル作製も、行動が早くて助かりました。3Dプリンター選定時も2つノズルがあるタイプとどっちがいいのか迷っていて、両方でサンプルを試作して違いを説明してくれました。スキャナー導入時も、こちらが希望したものより上のスペックのものも紹介してくれて、現場でほんとうに使えるものを提案してくれました。購入後も『こういう素材ないですか?』と投げかけると、抗菌素材など有益な最新情報を提供してくれて、助かっています。」(松田様)

 

― 最後に、当社への期待をお聞かせください。

 

「新しい機器や材料が日々でて来る分野ですので、どうしても自分で調べるのには限界があります。メーカーサイトには良いことしか書かれていませんので、日本3Dプリンターさんにあれこれ相談できるのは安心感があります。これからも最新の情報やオススメの機種、素材をどんどん、発信していってもらいたいです。」(松田様)

 

一木様・松田様


 

 

【Raise3D Pro2】3Dプリンター (製品ページへ)※販売終了

Raise3D Pro2

高耐久・高精度・30種以上の樹脂に対応する、デュアルヘッド3Dプリンター。

可動式デュアルヘッド搭載で、トルクパフォーマンスは従来の4倍以上。

タッチパネルを搭載することで高い操作性と進行状況の可視化を実現。

【最大造形サイズ】 305×305×300mm

※現在は後継となるRaise3D Pro3をご案内しております。

 

【EinScan H】3Dスキャナー (製品ページへ)※販売終了

EinScan H

赤外線とLEDの2つの光源を搭載した、ハイブリッドハンディスキャナー。

LEDによる高精細なスキャンと、LEDが苦手とする黒色に対応可能な赤外線のスキャンを

1つにすることでより手軽に素早く、幅広い分野の3Dスキャンを実現。

※現在は後継となるEinScan H2をご案内しております。

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