3Dスキャナーとは?
2021.05.04 更新日:2024.03.05
- 3Dスキャナー
3Dデータの活用がより一般的になりつつある昨今では、3Dスキャナーへの関心も高まっています。
3Dスキャナーがあれば、製品の計測や検査のほか、近年注目を集めているリバースエンジニアリングも可能。また3Dプリンターと3Dスキャナーを組み合わせることによって、ラピッドプロトタイピングも実現できます。
幅広い可能性を持ち、今後ますますニーズが高まってくることが見込まれる3Dスキャナー。
この記事では、3Dスキャナーに興味をお持ちの方へ向けて、3Dスキャナーの基礎知識について徹底解説していきます。
3Dスキャナーとは
3Dスキャナーは、立体物をさまざまな方法でスキャンし、3Dデータとして取り込むことができる機械です。
対象物にセンサーを当てたり、レーザーなどの光を照射したりすることによって、対象物の「高さ(X)」「横幅(Y)」「奥行き(Z)」の三次元座標データを取得。
さまざまな角度からスキャンした座標データを組み合わせて「点群データ」を作り、そこからさらに、"座標の点を直線で結んで作った三角形の面"で覆われた「ポリゴンデータ(メッシュデータ)」に変換することで、3Dデータとなります。
3Dスキャナーの種類とスキャン方式
一口に3Dスキャナーと言っても、「接触式」と「非接触式」の大きく2つの種類に分かれます。
接触式3Dスキャナー
接触式3Dスキャナーでは、センサーや探針(プローブ)を対象物に接触させ、接触した位置の座標を取得します。全体をスキャンするのに時間がかかりますが、非接触式3Dスキャナーよりも精度が高く、製品の測定や検査に利用されるのが一般的です。
対象物に接触する必要があるため、センサーや探針(プローブ)が入り込めない複雑な形状や細かい部分はスキャンできません。
非接触式3Dスキャナー
最も一般的な3Dスキャナーが、非接触式3Dスキャナーです。文字通り対象物に接触せずにスキャンできる3Dスキャナーで、接触式3Dスキャナーではスキャンできない複雑な形状や細かい部分もスキャンすることができます。
非接触式3Dスキャナーには、「パターン光投影方式」と「レーザー光線方式」の2つのスキャン方法があります。
パターン光投影方式
パターン光投影方式では、縞模様などのパターンを対象物に投影。対象物の凹凸によるパターンの歪みを認識し、スキャナから対象物までの距離を計測して座標を取得します。
一度でスキャンできる面積が広いため、全体のスキャンにかかる時間が短く、また正確で比較的ノイズの少ないデータになります。
レーザー光線方式
レーザー光線方式では、文字通りレーザー光線を対象物に照射。
座標を取得する仕組みは、さらに3つの方式に分かれます。
①三角法方式・・・最も一般的な方式。対象物に当てたレーザー光線の反射光をセンサーで識別し、三角法によって距離を求めて座標を取得。
②TOF(タイムオブフライト)方式・・・対象物に当てたレーザー光線の反射光が、センサーに到達するまでの時間から距離を求めて座標を取得。比較的小型のものが得意。
③位相差方式・・・対象物に波長の異なるレーザー光線を照射し、反射光の位相差から距離を求めて座標を取得。比較的大型のものが得意。
レーザー光線方式は、ハンディタイプと空間をスキャンするスキャナーに多い方式のため、小さいものから比較的大きいものまでスキャンが可能です。
番外編:X線CTスキャナー
かなり高額な機材のため、導入対象ユーザーは限定されますが、「X線CTスキャナー」というスキャナーもあります。
医療現場で利用されているCTスキャンと同じ原理のもので、通常3Dスキャナーでは対象物の表面しかスキャンができませんが、X線CTスキャナーは、対象物の内部までスキャンすることができます。
そのため、主に分解ができない精密機器の内部を確認するためなどに利用されます。
3Dスキャナーの位置合わせ方式
ここから先は、一般的に3Dスキャナーと言われている、非接触式3Dスキャナーについて解説していきます。
3Dスキャナーを使用する際、1回のスキャンでは対象物の一部分の座標しか取得できないため、さまざまな角度から複数回スキャンを繰り返します。そしてそれらのスキャンデータを組み合わせることで、1つの3Dデータを作り上げていくのです。
さまざまな角度からスキャンしたデータを1つの立体物に組み合わせるには、基準が必要になります。その基準をどこにするのかというのが、位置合わせ方式です。
位置合わせ方式は、「マーカー位置合わせ方式」と「形状位置合わせ方式」の2つのタイプが一般的。製品によっては、両方が組み合わさった「ハイブリッド方式」が選択できるものもあります。
マーカー位置合わせ方式
マーカー位置合わせ方式は、対象物にマーカーシールを貼るか、台座に描かれたマーカーを基準とする方式です。立体物が変形したり、マーカーシールが移動したりしなければ、上下や裏表をひっくり返しても基準を認識できるため、比較的正確にスキャンすることができます。
形状位置合わせ方式
形状位置合わせ方式は、スキャンしたデータの中から共通の形状を見つけ、つなぎ合わせていく方式です。人体や美術品など、マーカーシールを貼り付けることができない対象物にこちらの方式を使用します。比較的スキャン時間が短く済むのも特徴です。
似た方式として、形状ではなく、共通のテクスチャで位置合わせをする「テクスチャ位置合わせ方式」もあります。
3Dスキャナーでのスキャンから3Dデータ完成までの大まかな流れ
ここからは、3Dスキャナーでのスキャンから、3Dデータ完成までの流れを簡単にご紹介していきます。
1.対象物を3Dスキャナーでスキャンする
対象物と3Dスキャナーを用意して、スキャンをします。
据置タイプの場合は、対象物を置き換えたり、ターンテーブルで回転させたりすることで、できる限り穴のないデータを作成していきます。最近では、製品純正のターンテーブルを使用することで、ある程度自動でスキャンするタイプも増えています。
ハンディタイプの場合は、手で角度を変えながら、何パターンも手動でスキャンをしていきます。
通常はデータが多いほど精度が高くなるものですが、ハンディタイプの場合、スキャンをする方の技術次第では合成誤差が大きくなってしまうため、必要最低限の回数で、一回一回なるべく正確にスキャンするというのがポイントです。
ちなみに、ハンディタイプのスキャンのコツは、アイロンがけのように腕を動かすこと。焦点距離の位置に洋服がかかっていると思って、その服にアイロンがけを行うように腕を動かすと上手くスキャンできます。
関連コラム:3Dスキャナーが立体物を読み取る原理は?
2.スキャンデータの後処理
スキャンをしただけで、3Dデータが完成するわけではありません。ソフトウェアによる後処理が必要です。
スキャンしたデータは、選択した位置合わせ方式によって、自動で「点群データ」に組み合わされているのが一般的です。製品によっては、それぞれのデータを手動で組み合わせる必要がある場合もあります。
「点群データ」を、"座標の点を直線で結んで作った三角形の面"で覆われた「ポリゴンデータ(メッシュデータ)」に変換したら、後処理を行なっていきます。
面のノイズ(実際には存在しない不要な凹凸)をきれいにしたり、穴ができてしまっているところを埋めたり、エッジが取れてしまっているところを修復したりしましょう。またスキャンで写り込んでしまった不要な部分も削除します。
大きくて複雑な立体物ほどデータが重くなるため、必要に応じてデータの軽量化も行います。
関連コラム:3Dスキャナーを活用するために必要なソフトとは?
関連コラム:3Dスキャナーで得られるデータ形式とは?使用するために必要な作業について徹底解説
3.3Dデータ完成
穴のない「ポリゴンデータ(メッシュデータ)」になったら、3Dデータは完成。
完成した3Dデータは「STL形式(.stl)」であることが一般的です。
このデータを活用することで、3DCADデータと比較したり、3Dプリンターで造形したりすることができます。
一方、このまま3DCADソフトにインポートしても、3DCADデータとして編集をすることはできません。3DCADソフトで編集を行うには、もう一手間必要になります。
3Dスキャナーの主な使用用途
3Dスキャナーには、さまざまな使用用途があり、これからもっと活用シーンが広がっていくことが予想されます。ここでは、現在の3Dスキャナーの主な使用用途をご紹介していきます。
測定・検査
品質の担保が求められる製品の測定や検査を行うことができます。対象の製品を3Dスキャナーでスキャンし3Dデータ化すれば、寸法交差や設計の3DCADデータと比較した幾何公差のレポートも簡単に作成可能です。
また設計に対しての製品の仕上がり具合を見える化できるため、不具合箇所の解明にかかる時間を大幅に短縮できます。
さらに、設計の3DCADデータがなくても、3Dスキャナーで既存製品をスキャンし、CADデータをリバースエンジニアリングすることで3Dデータを作成できます。これによって、製品リニューアル後に1つ前の製品との形状を比較したり、同一、あるいは、類似の製品同士で比較したりすることも簡単です。
リバースエンジニアリング
リバースエンジニアリングとは、一般的に、既存の対象物を観察したり、測定したり、分解したり、解析したりすることによって、動作原理や製造方法、設計図といった仕様を調査することです。
従来製品を調査するリバースエンジニアリングは、今や製品開発の現場において欠かせないプロセスの一つとなっています。
3Dスキャナーがあれば、より優れた製品を開発するために競合製品を解析したり、設計図や仕様書が存在しない過去の自社製品を解析して、製品の復活やリニューアルをしたりすることが可能です。
また製品開発の初期段階に手作業で作られたモックアップ、金型、試作品などの3DCADデータを作成することも、ものづくりの現場におけるリバースエンジニアリングの一つです。
試作品の3DCADデータがあれば簡単に改良を加えることができ、さらに3Dプリンターで、すぐに改良版の試作品を造形することもできます。試作品に手作業で改良を加えた場合に、その試作品をスキャンしてスピーディに3DCADデータに変更を反映させることも可能です。
このように、3Dスキャナーと3Dプリンターを組み合わせることで、ラピッドプロトタイピングも実現できます。
フィギュア・模型の製作
実在の人物のフィギュアのほか、歴史的建造物や美術品などの忠実な模型を製作することが可能です。
プロダクトデザイン
3Dスキャナーで既存製品の3Dデータを用意すれば、既存製品のリデザインや、既存製品をベースとした新たなデザインの作成もより簡単に行うことができます。
テクスチャの3Dデータ化
木目や皮革といった特徴的なテクスチャを、3Dスキャナーで3Dデータ化することもできます。テクスチャのデータを製品の3DCADデータの面に重ね合わせれば、簡単にテクスチャを再現した製品を造形することができ、またテクスチャの変更も容易に行えます。
関連コラム:3Dスキャナーの活用事例にはどんなものがある?
関連コラム:3Dスキャナーを活用するメリットとは?
3Dスキャナーを購入する際に知っておきたいこと
ここからは、3Dスキャナーを購入しようと考えている方へ向けて、3Dスキャナーを購入する前に知っておいていただきたいことをご紹介していきます。
3Dスキャナーでスキャンできないものがある
3Dスキャナーは万能ではないため、当然スキャンできないものも存在します。
接触式3Dスキャナーの場合は、センサーや探針(プローブ)が入り込めない複雑な形状や細かい部分はスキャンできません。
また一般的に、非接触式3Dスキャナーの場合は、以下のものはスキャンできません。
・黒いもの
・透けているもの
・光沢のあるもの
・鏡面になっているもの
非接触式3Dスキャナーは、距離の測定に光を利用します。そのため、光を吸収してしまう黒いものや光を通してしまう透けているもの、通常と反射が異なる光沢のあるもの、鏡面になっているものはうまくスキャンができないのです。
こういった対象物をスキャンする場合は、通常サーフェイサーと呼ばれる白い粉を表面に吹き付けてスキャンをしますが、サーフェイサーの使用ができないものもあります。
一部分だけがスキャンできない場合は、3Dデータの後処理のタイミングで修正するのもあり。
レーザー光源を使用した3Dスキャナーには、黒いものや光沢のあるものでも問題なくスキャンできる製品も登場しています。スキャン予定の対象物、運用方法によっては、予めそういった製品を選ぶのがおすすめです。
関連コラム:【EinScan活用法】粉が自然に消える!?3Dスキャン用スプレー
必ずスキャンデータの後処理が必要
3Dスキャナーでのスキャンから3Dデータ完成までの流れでもお伝えしましたが、3Dスキャナーでスキャンをしただけで完全な3Dデータが手に入るわけではありません。
3Dスキャナーの性能にもよりますが、面のノイズ(実際には存在しない不要な凹凸)や穴があったり、エッジが取れてしまったりするため、必ず、ソフトウェアによる後処理が必要です。
また対象物の任意の箇所だけのピンポイントな3Dデータが欲しい場合は、不要な部分の削除も必要になります。
3DCADソフトで編集できるデータにするには、さらに一手間必要です。完成した3Dデータをただ3DCADソフトにインポートしただけでは編集できないということを覚えておいてください。
使用用途で最適な製品タイプは異なる
3Dスキャナーは、種類やスキャン方法によって、それぞれ得意なもの・不得意なものがあります。
精度が求められる測定や検査には、接触式3Dスキャナーや据置タイプの非接触式3Dスキャナーを、比較的大きいものをスキャンする場合は、ハンディタイプの非接触式3Dスキャナーを使用するのが一般的です。
ハンディタイプの中には、三脚で固定して据置タイプとしても使用できるものもあるため、そういった製品を購入して、対象物によって使い分けるのも一つの手です。
また製品によって解像度が異なるため、どのくらい鮮明なデータが必要かによっても、選ぶ製品が異なります。
合成誤差の少ない、なるべく正確な3Dデータを作成するには、対象物と3Dスキャナー、さらにはソフトウェアの組み合わせも重要なため、必ず使用用途を明確にしてから製品選びを始めるようにしましょう。
ハンディタイプはテクニックも必要
据置タイプの3Dスキャナーの場合は大抵問題ありませんが、ハンディタイプの場合、3Dスキャナーの性能と合わせて、操作する人のテクニックも重要になります。
既にお伝えしている通り、3Dスキャナーでは、1回のスキャンでは対象物の一部分の座標しか取得できないため、さまざまな角度から複数回スキャンを繰り返し、そのデータを組み合わせて3Dデータを作成します。
スキャンデータを組み合わせる際に、多少なりとも合成誤差が生じますが、一回一回のスキャンにばらつきがあればあるほど、その合成誤差が大きくなってしまい、正確な3Dデータにするのが難しくなっていきます。
そのため、ハンディタイプでカタログスペックと同等の精度を出すには、3Dスキャナーを操作する人のテクニックが必要になるのです。
何度もスキャンを繰り返して技術レベルを上げていくことももちろんですが、製品選びの際に、必ず操作のしやすさもチェックするようにしましょう。
関連コラム:ハンディタイプ3Dスキャナーのメリット・デメリットとは?
関連コラム:ハンディ3Dスキャンを効率的に行うための7つのコツ
3Dスキャナー選びも日本3Dプリンター株式会社にお任せください!
3Dスキャナーを購入する際、カタログのスペックだけで決めるのはちょっと危険です。
先ほどもお伝えした通り、ハンディタイプは操作する人のテクニックによっても精度が変わりますし、据置タイプでも対象物によってはカタログスペックが出ないこともあります。
どのスキャナーが最適なのかは、実際に使ってみて比較するか、ある程度3Dスキャナーの使用経験がないと、判断が難しいのです。
日本3Dプリンター株式会社では、3Dプリンターだけでなく、3Dスキャナーや3Dモデリング・3D測定のソフトウェアも取り扱っています。
製品に関する情報はもちろん、実際に製品を使用した上での知識も持った3Dスキャンニング専門のスタッフが在籍しており、貴社に最適な製品のご提案を行います。
また取扱製品のメーカー認証資格を持つプロのエンジニアも在籍しているため、導入後のサポートも充実。
トラブル対応はもちろん、使用する上で必要なノウハウの提供もいたしますので、安心して3Dスキャナーを導入していただけます。特に3Dスキャナーを初めて購入されるという方は、ぜひ、当社にご相談ください。
3Dスキャンサービスにも対応しています!
3Dスキャナーでのスキャンから3Dデータ完成までには、ある程度の技術と時間が必要です。
技術的に、あるいは、時間的に、自社で3Dスキャナーを活用するのは難しいと感じた場合は、3Dスキャナーを購入するのではなく、スキャンからCADデータ作成までを代行してくれる3Dスキャンサービスを利用するのも一つの手です。
また3Dスキャナーを自社に導入する場合、コスト的に、複数の製品やソフトウェアを購入するのはなかなか難しい場合も多いですが、3Dスキャンサービスであれば、サービス提供会社が保有する複数の製品の中から、最適なものを使用して3Dデータを作成してもらえるため、試作品や部品などの比較的小さなもののスキャンは自社で、大きな製品のスキャンは3Dスキャンサービスを利用するといった使い分けもいいでしょう。
日本3Dプリンター株式会社でも、3Dスキャンサービスを行なっています。
三次元測定器や3Dスキャナーを使用した計測のほか、リバースエンジニアリングにも対応可能です。
計測の対象は、小型部品や大型部品のみならず、建築物まで対応可能。三次元計測機と空間スキャナー、さらに複数のソフトウェアを保有しており、貴社のニーズに合わせて最適なアウトプットをご提供いたします。
またリバースエンジニアリングでも、対象物のサイズや形状、表面色、要求精度などに合わせて、豊富な3Dスキャナーラインナップの中から最適な製品を選定し、スキャンを行います。
現場でどのように使用されるかを考慮した上で最適な3Dデータを作成しますので、納品したデータをそのまますぐに現場で活用することが可能です。
3Dスキャナーの購入相談だけでなく、3Dスキャナーによる計測やリバースエンジニアリングに興味をお持ちでしたら、お気軽にお問い合わせください。