3Dプリンターでよくあるトラブルとは?原因や解決策を解説
2021.06.30 更新日:2024.03.05
- 3Dプリンター
さまざまな立体物を造形する際に活躍する3Dプリンターの注目度は、年々高まっています。
自動で精密な造形が可能な3Dプリンターは、特に製造業などの物づくりの現場で脚光を浴びており、この記事をご覧の方の中にも、導入をご検討の方がいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、3Dプリンターは精密機器であるため、さまざまなことに気をつけなければ、思わぬトラブルを引き起こしてしまう場合もあります。
そこでこの記事では、3Dプリンターでよくあるトラブルの原因と、その解決策を詳しく解説していきます。
3Dプリンターの造形でよくあるトラブルとは
3Dプリンターの造形でよくあるトラブルとして挙げられるものは、「ノズルから樹脂が押し出されない」「モーター、もしくはプリント結果の異常」「底面が土台から離れている」などがあります。
各々のトラブルが起こってしまった際の原因や解決策をご説明しますので、今まさにお困りの方はもちろん、これから3Dプリンターの導入をご検討されている方も、参考になさってください。
ノズルから樹脂が押し出されない
熱溶解積層の造形方式では、ノズルから樹脂が押し出されないといったトラブルが比較的よく見られます。フィラメントをさし込んでいるのに、ノズルから溶かされた樹脂が出てこないというトラブルです。 こうしたトラブルが起こる原因は、大きく分けて2つ考えられます。
原因①:フィラメントを送るギアが詰まっている
樹脂が押し出されない原因として考えられるもののひとつ目は、フィラメントを送るギアの歯が詰まってしまっているという状態。
ギアが詰まってしまうと、フィラメントを噛むことができず、空回りを起こしてしまうのです。
解決策
フィラメントを送るギアが詰まってしまっている場合は、単純に、ギアの掃除をすることが解決に繋がります。
というのも、フィラメントの送り出しのギアは歯が細かく、長期にわたって使っていると、フィラメントの削りかすが蓄積されてしまうのです。
ギアの歯にフィラメントの破片が溜まっている場合は、まず、ギアが露出するまでヘッドを分解し、エアダスターなどを使用して歯に溜まった破片を払いましょう。 もしもエアダスターで破片を除去しきれない場合は、細い針金などを使って破片を掻きだす方法もありますが、ギアを傷つけないよう、細心の注意を払ってください。
原因②:ノズルの詰まり
ノズルから樹脂が押し出されない原因のふたつ目は、ノズルの詰まりです。
ギアを掃除しても樹脂が排出されない場合は、ノズルが詰まっている可能性があります。
造形をする時、ノズルは200℃以上に加熱されてフィラメントを溶かしており、必要な樹脂を排出し終わっても、溶けた樹脂はノズルの中に残留します。
残留した樹脂がノズルの中で固まってしまい、それが繰り返されることで、ノズルが徐々に詰まってしまうのです。
解決策
まずは、詰まってしまったノズルを加熱します。
ノズルを加熱することで、ノズル内に残留した樹脂が溶けるので、細い金属や専用の器具をノズルにさし込み、何度か抜きさししてください。
この作業を繰り返すことで、ノズル内の樹脂が掻きだされ、詰まりが解決することがあります。
掻きだされた樹脂は高温ですので、作業の際は十分に注意してください。
原因:駆動部周辺の障害
3Dプリンター内部のタイミングベルトとプーリーの間に異物などが挟まった場合、プリント時に障害が発生するといったことがあります。
またタイミングベルトに異物が付着していると、タイミングベルトを張っているプーリーに巻き込んだ際にプリンターの挙動がおかしくなったり、造形物に影響が出たりします。
解決策
こちらもギアの詰まり同様に非常にシンプルで、ベルトとプーリーの間に挟まっている異物を取り除くことが一番の解決策です。
庫内駆動部分周辺を確認し、軸の移動を妨害している障害物が見つかった際は取り除いてください。
その上で再度プリントを行えば、正常に造形が行えるはずです。
底面が土台から離れている
造形物の底面が土台から離れてしまう場合、造形物が移動してしまい、ノズルから出るフィラメントがデータとは違うところに置かれ、造形が失敗してしまうといったことが起こります。
原因①:土台のコンディションが悪い
原因のひとつとして考えられるのは、土台のコンディション不良です。
熱溶解積層方式での土台への樹脂定着方法はいくつかありますが、中でも一般的なのが、土台の表面に凸凹を作り、そこに樹脂を食い込ませるといった方法。
凸凹の作り方には、専用の糊を塗る方法があります。
しかし、何らかの理由で土台の金属板やガラスのツルツルな面がむき出しになっていると、樹脂が定着せず、造形が失敗してしまうのです。
解決策
土台の表面を凸凹にする糊はそもそも消耗品で、剥がれていることがあります。
造形を始める前にしっかりとチェックをして、消耗している場合は取り換えておくなどの対処で解決できるはずです。
また、ラフトを使用するといった解決方法もあります。
ラフトも糊のような役割を果たしてくれるもので、造形の安定性を高めることのできる、薄い仮のテーブルです。
最初にラフトを造形してから、その上に目的の物を造形すれば、土台のコンディション不良を解決することができます。
原因②:ノズルの温度が足りていない
ノズルの温度は樹脂の溶け具合に直結します。
樹脂の溶け具合に直結するということは、土台への定着具合にもほぼ間違いなく影響するということ。
特にABS樹脂の場合は、低い温度ではなかなか土台に定着しません。
解決策
解決策としては、ノズルの温度を上げること。
一般的にノズルの最適温度は、ABS樹脂の場合、240℃~250℃です。
この温度に上げて、再度造形をしてみましょう。しっかりと土台に定着し、造形の崩れもなくなる可能性があります。
しかし、プリンターの機種ごとに上限温度や推奨の出力温度があるため、事前の確認が必須です。
原因③:Z軸の校正値がズレている
また、Z軸の校正値がズレていることが原因で、底面が土台から離れてしまう場合もあります。
Z軸とは上下方向の積層のことで、この校正値が正しく設定されていないことで、ノズルと土台との間に大きな隙間が生まれてしまい、定着率が悪くなってしまうのです。
解決策
Z軸の校正値のキャブレーションを行ってください。
具体的な作業は、ノズルと土台の高さ調整(レベリング)です。
ノズルと土台を原点位置まで移動させた際に、コピー用紙一枚を動かせる程度の隙間を設けます。
とはいえ、ノズルと土台の隙間については、使用するノズルやフィラメントの直径によって変わりますので、本番前にテストプリントをしながら様子を見ましょう。
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いざという時のために、3Dプリンターでよくあるトラブルを把握しよう!
ここまでご説明してきたように、3Dプリンターには比較的よく起きるトラブルというものがあります。
3Dプリンターの良い面だけを見て機種を選択してしまうと、「思うように動作しない」「理想の造形ができない」といったことにもなりかねません。
事前に3Dプリンターのトラブルについて良く理解し、それらを考慮しながら機種選びを検討されたほうが良い場合もあります。
導入する製品にお悩みの方は、3Dプリンターに詳しいプロの力を借りるのもひとつの手です。
日本3Dプリンター株式会社には、3Dプリンティングや3Dスキャニングの専門知識を持ったスタッフが多く在籍しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
貴社が希望されている造形とよくあるトラブルを照らし合わせて、トラブル頻度を最低限に、理想の造形を叶える3Dプリンターをご案内いたします。
また、今現在使用している3Dプリンターのトラブルでお困りの方も、お問い合わせいただければ、解決法をアドバイスさせていただくことも可能です。
これから導入を検討している、今現在プリンターの不調で困っている、その他にも、3Dプリンターに関するお悩み事でしたら、日本3Dプリンター株式会社にお任せください。
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