2022年2月、北京冬季オリンピックが開催されました。
北京五輪では過去最大数となる109の競技種目が競われましたが、最初の冬季オリンピック（1924年 シャモニー五輪）ではわずか16種目だったそうです。

ボブスレーは第1回大会から五輪種目として競技されている、歴史あるウインタースポーツです。「氷上のF-1」と呼ばれ、そりの最高速度は時速160kmにも達し、急加速・急減速時には数Gの力が発生します。

氷上のF-1で使用するヘルメットに求められること

ボブスレー選手が使用する専用のフルフェイスヘルメットは、選手の安全を最優先に考えつつ、より速いタイムのために、厳しい条件下での快適性をも追求し続けています。

東莞理工大学のLi教授が率いるボブスレーヘルメット研究開発チームは、Farsoon社やWanhuaグループとともに、以前よりAM技術の活用を検討してきました。

「従来の製造方法と比較して、AM技術は最適なデザインとカスタマイズをより柔軟にします。私たちは、3Dプリント、材料科学、デザインプロトタイピングの分野のスペシャリストと協力し、この全く新しいボブスレー用ヘルメットを共に作り上げることができたことを誇りに思います。」

図1：Farsoon Flight® Technologyで製作された3Dプリントのボブスレー用ヘルメット裏地
画像提供：Farsoon Technologies

オープンなパートナーシップで実現する生産効率と最適性能

この革新的なデザインの、ヘルメットライニング（裏地）には、極限の温度下で優れた性能を発揮するために開発されたWanhua Chemical社の特殊なTPU素材を、Farsoon社のデュアルレーザーFlight®テクノロジーで製造されたものが使用されています。

Wanhua Chemical社の戦略R&DマネージャーであるYang Jie博士は、「ヘルメットのライニングに求められる優れた耐衝撃性、耐衝撃性、衝撃吸収性を満たすため、Farsoonのファイバーレーザー焼結プロセス用にWF-PU95AB TPU材料を特別に開発 しました。レーザー吸収やTPU材料加工のための粉体再コーティングなどの難しい技術的問題を解決し、-35℃の低温でも弾性と柔軟性を含む優れた物理的特性を達成しました。」と述べています。

Farsoonの最新デュアルファイバーレーザーFlight®テクノロジーは、300Wの強力なファイバーレーザーと2つのダイナミック光学系を活用し、それぞれ最大20m/sの高速スキャンで2つの超微細レーザースポットを作り、TPU素材の工業規模の生産性を提供します。また、Flight 403Pの持つ400×400×450mmの造形エリアは、ヘルメットライニング2個を1回の製作で7.5時間という短時間で製作することが可能です。

また、Farsoonのすべての機械が提供するオープンパラメータ戦略のおかげで、LiはWanhuaと協力して、レーザー出力、スキャン間隔、積層厚みなど様々なパラメータの組み合わせを試し、機械的な性能と重量のバランスを取る、最適な設定を見つけ出すことができました。

図2：（GIF画像）Farsoonのオープンプラットフォームにより、ヘルメット裏地の加工パラメータを最適化
画像提供：Farsoon Technology

図3：（動画）Farsoon’s Flight® Technologyによるボブスレー用ヘルメットライニングの製作過程
動画提供：Farsoon Technology

カスタマイズされた格子構造デザインにより、軽量化と安全性向上を実現

新世代のヘルメットは、3Dスキャンを使用して各選手の頭部形状データを収集し、それぞれに最適なヘルメットライニングの格子構造デザインとなるよう個別調整することで、優れたフィッティングを実現し、競技中の着用感と安全性を向上させました。

ボブスレーヘルメット研究開発チームが開発した格子構造は、クッション性の異なる複数の層で構成されています。衝突頻度の高いエリアに密度を変化させた構造を使い、頭部衝突によるダメージを的確に吸収できるようになっています。これらの耐衝撃構造は、アスリートにかつてない保護性能を提供します。

3Dプリントされた格子構造のライニングは、カーボンファイバー製のシェルと合わせて1.1kgとなり、従来のフォームヘルメットに比べて500gの軽量化を達成しました。

「Farsoonの高速デュアルレーザーフライト® テクノロジーのおかげで、カスタマイズ設計と製造プロセスの加速を実現することができました。」とLiは語ります。「ヘルメットのライニングの衝撃強度が国際標準と比較して40％以上向上しており、新世代のカスタマイズヘルメットの性能に感動しています。また、今回設計された格子構造は、他のスポーツ用保護具、ヘルメット、鎧、その他の保護具の改良にも役立つことでしょう、このことも、私たちにとっては大変刺激的なことです。」

図4：東莞科衡試作有限公司がヘルメットの裏地のデザインの検証を行う
画像提供：Farsoon Technology

この新しいボブスレー用ヘルメットは、すでにGBとECEの認証を通過しており、FIS（国際スキー連盟）の要求も満たしています。
Farsoonは、SLSによる3D造形技術の先駆者として技術の限界を押し広げ、オリンピック精神に則り、アスリートの可能性を追求する手助けを続けています。