少量生産・内製化にも“強度”という価値を3Dプリンターがかなえる、モノづくりへの挑戦
2023.04.26 更新日:2024.03.01
有限会社TSDESIGN 様
- 3Dプリンター
- Markforged
- 製造業
- デザイン
TSDESIGNは、
企業名:
導入製品:
<導入前の課題>
- ・以前使用していた3Dプリンターは動作安定性が乏しく、出力ミスが多発
- ・高い強度を出せる素材が使用できず、実製品の製作はできなかった
- ・造形には強度だけでなく、コンマ1ミリ単位で調整できる精度も求められた
<解決>
- ・軽さと強さにすぐれたカーボンファイバー(炭素繊維)が利用可能に
- ・難しい形状のサンプル試作を依頼。その仕上がり精度に納得
- ・車椅子や自転車の部品を実際に製作・販売。クレーム発生などゼロ
TSDESIGNでは以前から、主にモックアップづくりで他社製の3Dプリンターを利用されていたとのこと。しかし、実用可能な製品やパーツも3Dプリンターで自製したいと考え、Markforged Mark Two(以下、Mark Two) を導入されました。なぜMark Twoを選ばれたのか、そして製作した部品の評価について、TSDESIGNの顧客であるレベルワーククラフトの代表、鵜飼様にも同席いただき、お話しを伺いました。
背景・課題
以前の3Dプリンターでは得られなかった
“実用”に耐えうる安定性や強度
― Mark Two導入前の状況を教えてください。
当社が3Dプリンターを初めて導入した頃は、まだ事業を立ち上げて間もないメーカーも多く、当社で購入した熱溶解積層方式のコンシューマ機も動作安定性が乏しいという状態でした。主にモックアップづくりに使っていましたが、稼働させるとズレ始め、3回に1回は出力ミスが発生。失敗するたびにヘッドとベッドの距離を調整し直していました。はじめは新しい製作手段だからと大目に見て楽しみながら使っていたものの、やはり材料も時間もロスが多いのは悩みでした。(角南様)
また、実用可能な製品やパーツの少量生産にも活用したいと考えたのですが、以前の3Dプリンターでは必要な強度を出せる素材が使用できませんでした。やがて自社商品として自転車用フレームを開発するにあたって付属部品を自製したいということになり、強度の高い部品を製作できる新たな3Dプリンターが欲しいと思うようになりました。(角南様)
選定・導入
カーボンファイバーを使えるインパクト
サンプルの仕上がりを見て導入を決心
― Mark Twoをどのようにして知り、導入を決められたのでしょう。
強度の高い部品を製作できる3Dプリンターが欲しいと考えるようになっていた頃、ある販売会社からMark Twoの存在を聞きました。カーボンファイバー(炭素繊維)を使用できるため、オートバイのブレーキレバーを製作できる程度の強度が出せるとのこと。興味を持って問い合わせをしたものの、その対応や説明の姿勢に疑問を感じて別の販売会社を探し、たどり着いたのが日本3Dプリンターでした。コンタクトをとってみると、ていねいな案内や対応があり、導入を前向きに検討することにしました。(角南様)
まず当時は、カーボンファイバーを使える3Dプリンターが他にはなく、非常に画期的だと思いました。また、当社で製作したいと考えていたパーツの多くが10~20cmサイズでしたので、ある程度大きい出力サイズも必要でした。このニーズにMark Twoは合致していましたので、日本3Dプリンターにサンプル製作を依頼。データを送って1週間ほどでできたサンプルを拝見し、仕上がりを確認して導入を決めたのが経緯です。その際、わざと他社の3Dプリンターが苦手とするような形状のパーツを試作してもらったのですが、高い精度でしっかりと作られていることに感心しました。(角南様)
ご活用内容・成果
求めていた強度・精度でパーツを自社製作
微調整が正確にでき、手軽なのもうれしい
― Mark Twoでは、どのようなものを製作していますか。
例えば、自転車のフレーム用のスペーサー。人間の体重が直接かかる部分に使っていますので、かなりの強度が必要です。これはナイロン素材(※)で製作していますが特にクレームなどは起きておらず、Mark Twoなら十分な強度が確保できていると考えられます。既存の3Dプリンターで製作したものだと、まったく使い物になりません。(角南様)
※ナイロンを母材としてカーボンフィラーを含んだOnyxフィラメント
そのため、以前なら金属で作るか、樹脂であれば金型を起こすか、時には外注してきました。まず、これらの手段では投資額が膨らむことから、極めて小ロットな生産では採算が合いません。納期の問題もあります。しかし、3Dプリンターを使って社内で製作すれば大幅にコストが抑えられ、非常にメリットがあります。Mark Twoなら一晩でできます。Mark Twoはアプリケーションもよくできていますね。クラウド型であり、インターフェースのデザインも継続的に改良され、とても使いやすく満足しています。
さらには導入してみて、あらためて評価しているのが、非常に高精度なものが失敗なく作れる点です。例えば、車椅子に使っているパーツがあるのでご紹介したいと思います。(角南様)
― どのような車椅子に使われているのでしょう。
まず、私はオーダーメイドで車椅子の製造をしており、これに使用するパーツの製作をTSDESIGNさんに発注しています。重度身体障害者用ですので、一人ひとりに合わせて設定されたスペックで製作することから、部品は自由に設計し、少量生産したい。そして、人が乗るものですので当然強度も必要です。そのため、Mark Twoを利用するメリットがあり、TSDESIGNさんに依頼しています。(鵜飼様)
具体的に製作依頼をしているのは、車椅子の両サイドに付いたガードに使われるスペーサーです。金属のパイプどうしをジョイントしつつ、ガタつきなくスムーズにスライド可動させるものです。介助する人にとっても、扱いやすいものが理想です。(鵜飼様)
主な材料はナイロン(※)で、樹脂の中でも自己潤滑性が高い素材であるため軸受けに適しています。これはいわゆる“はめあい”の部品ですので寸法公差が重要です。金型で製作すると、形状を微調整するにも金型を修正する大変な作業が発生しますが、3Dプリンターなら入力データを微調整するだけです。このパーツも2度ほど調整しましたが、そう手間はかかりませんでした。Mark Twoは精度が高いので、コンマ1ミリ程度の誤差はきちんと結果に反映されます。(角南様)
※ナイロンを母材としてカーボンフィラーを含んだOnyxフィラメント
今後の展望・当社への期待
Mark Twoがあるからこそチャレンジできる
もっと顧客の希望、自分たちの夢をカタチに
― 今後に向け、どのようなことを期待されますか。
一部の人たちだけが利用する製品というものはあり、特別な部品が必要になることは引き続きあるでしょう。その際、Mark Two は大変有効なソリューションです。TSDESIGNさんは気兼ねなく相談してすぐに対応してくれる存在として信頼しており、どちらにも大きな期待を寄せています。
Mark Twoで製作したものには、形状確認だけでなく実用性も検証できるクオリティがあり、大きな費用をかけずに試すことができる。だから、何かを作りたいと思ったときに、生産計画まで考えなくても、「まずは、やってみよう」とモノづくりができる。さらなるチャレンジも促してくれそうです。(鵜飼様)
これまで、金型を起こして製造するほどの利益が見込めず、商品化できずにいたアイデアがたくさんありました。それがMark Twoという手段で可能になったことをお客様に提示できるようになり、新たなビジネスチャンスが広がっている。非常に小さい規模でモノづくりをされたい方々との、さらなるお付き合いが生まれていくことに期待しています。
当社としても、Mark Twoによって本来の目的であった「自社販売商品の、自社生産」が可能になりましたので、これを活かして自社ブランド商品の販売拡大に、より力を入れて取り組んでいきたいです。(角南様)
【Markforged Mark Two】3Dプリンター(製品ページへ)
高精度なメカニズム・機構設計によって、安定した造形が可能な3Dプリンター。
Onyxやナイロンでの造形物をさらに強化する、連続ファイバー材料による補強が可能。
カーボンファイバーを使用した場合、アルミに匹敵する強度を実現。
高品質ナイロンと微細なカーボンフィラーから成る材料。
美しい表面品質と寸法安定性、一般的なABSフィラメントの2倍に及ぶ強度が特長。